- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2005/05/25
- メディア: 文庫
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遠野物語はお好きでしょうか。 相対論を愛していますか。 ギリシャ神話無しで生きられますか。 量子力学を感じていますか。 ミルトンは、ホメロスはいかがでしょう。 超対称性は、M理論は。 ならば、お奨めです。 「神話的」ということ。簡潔さの中の力強さ。日常からの逸脱。荘厳。残酷。神秘。歴史。 多すぎない、少なすぎない。 パルテノン神殿と黄金比と円周率。天空の階律が奏でられる。そういうもの。 神話的SFの中で私が今までに気に入っていたのは『戦争を演じた神々たち』だった。 澄み渡って重厚な大原まり子の文体。語られる戦争、誕生、存在と時間と、死。死。死。 今、私の中で、『海を見る人』はそれと並んだ。 表題作を読んで思った。愛していたけれど、でも相対論がこんなに切ないなんて。 小林泰三の緻密で奔放な想像力と、語られる物理と寓話と純愛。 私は初めて、光速度不変を心で感じた気がする。 光円錐の内と外とに満ち溢れるいとおしさよ。