求められるエンド・ユーザー・コンピューティング

きたみりゅうじの連載 は、何かものを言いたくなるという点で上手いなぁ。

ソフトの使い方を覚えるというのは本質的なことではない。今現在、ホワイトカラーである個人が戦術としてそれらを覚える必要に迫られる局面は確かにあるだろう。でも、開発者がそれを肯定しちゃいけないよね。そういう「覚える負担」をなくすために開発すべきなのであって。

だが、ならば一般人は情報技術に対して無知であって良いのか。そのギャップは全て開発者が埋めるべきものなのか。それも違うと思う。世界認識を広げるための習得は必要だ。キーになるのは、「状態遷移システム」それから「非物質的実在」。エンド・ユーザー・コンピューティングを通じてこれらを習得することは万人に求められると考える。

最近の機械が使えない人というのは、大体が機械が状態を持つということに慣れていない。だから、何か操作をして状態が変化してしまうと、自分の立ち位置が分からなくなってパニックになる。かといって現代の生活で処理すべき情報操作のそれぞれについて1つボタンを作成するには、空間や鉱物資源はあまりにも足りない。そもそも、MS Wordと同じ機能を持つ大きさ100km四方の巨大なタイプライターを作ったとしてそれを使いたいだろうか。

状態遷移については受け入れてもらうしかないし、それによって新しい世界が広がるのだ。

それと絡むのが非物質的実在について。非物質を所有するというのは、かつては金融の人でもない限りあまり日常生活では目にすることはなかった。通貨価値は実際には非物質だけれども、でもそれは貨幣や紙幣によって物質に仮託することができた。サービスを受ける権利という所有は、現にその行為が行われるという光景に寄せることができた。象徴たる物質のよりしろを持たない非物質には一般人はあまり縁がなかった。

けれども、現在では非物質の所有が目の前に広がっている。Web業界は、ドメインや、アバターや、その他諸々の非物質的所有を次々と作り出している。別にそれが無くても生きていけるけれども、でも、この新しい大陸と無縁に生きるのは余りにももったいなくはないだろうか。

「物質以外の実在」「状態遷移」これは全ての人が知っておくべき価値であり、エンド・ユーザー・コンピューティングを通じて真に学ぶべきことはそういうことだ。