コモンズマーカー というサービスが立ち上がった。私もyuguiアカウントを作ってある。
コモンズマーカーとは何か
様々な外部サイトに対してユーザーが「マーク」をため込んでいくという意味では確かにソーシャルブックマーク的だ。そして、ページ内にユーザーがコメントを書き込むという意味では以前いくつか立ち上がったWEB付箋紙サービスにも似ている。けれども、これはそれ以外の何かだ。
付箋紙サービスはまだ近いのだけれども、コモンズマーカーは付箋紙というアナロジーを捨てた。これは大きな飛躍である。対象文書の特定箇所にコメントを貼り付けるに当たって、当該箇所のまさにそこにコメントを配置するのが付箋紙である。だが、このやり方はstaticな紙媒体の制約下で当該箇所とコメントとの結びつきを示すのに必要であるに過ぎない。
コモンズマーカーの場合は、コメントは文書の右サイドに一列に表示される。従って、大量のコメントがついたとしても、ページが付箋で埋め尽くされるということがない。そして、当該箇所に対してそこの部分へのコメントたち、コメントに対して対象箇所、相互の対応関係を辿るのが容易であるように上手く動的な表現がもたらされるように設計されている。
コモンズマーカーをソーシャルブックマークと見なすのは愚かだ。確かに、一部の人々はこれまでソーシャルブックマークを「コモンズマーカーのように」使ってきた。だから、運営側はそういった人々の移行を促すために敢えて誤解を招くような物言いもするかもしれない。
でも、むしろ私は LUNARR との相似を見る。そして、LUNARRがサイボウズの系譜に属する、「集約の元のコラボレート」を意図しているのに対して、コモンズマーカーは「分散しながらのコミュニケーション」である。乱暴な比喩で対応づけるならば、LUNARRがイントラネットでコモンズマーカーがインターネットだ。
可能性
コモンズマーカーは付箋サービスの系譜と無関係ではないだろう。だが、付箋というアナロジーを捨ててUIを再設計した、ということによって使いやすくなった。従来ソーシャルブックマークサービスを無理矢理適用していたような用途に使えるようになった。そして。
このサービスの初の発表はRejectKaigi2008であった。その前夜に私は 星さん からデモを見せてもらったのだが、とても興奮したのを覚えている。
残念な点を上げるとすれば特定人が付けたマークを提供するフィードがないこと、それからマークそれ自体に対するURIがないことである。これについては既に星さんに文句を言ってあって、近いうちに実装するという話だ。
フィードさえあれば、私はtwitterやはてなブックマークを利用していた発言の一部をもっぱらコモンズマーカーでするようになるだろう。Web上の特定のリソースを肴にみんなでtwitterでわいわい言い合うようなコミュニケーションはとても楽しいし、そこからしばしば有益な議論ができあがる。しかし、その肴としているリソースは後から発言を見た第三者にははっきりしないことがある。貴重な議論のコンテキストが、流れていってしまう。マーカー形式であればその問題は解消するだろう。とか。
twitterとはなんであったろうか。ミニブログと呼ぶのは簡単だが、それは、大量にfollowし合って利用しつくした人にしか分からない何かであった。そして、私たちはtwitterを通じて貴重な何かを得ることができた。同様にして、コモンズマーカーはソーシャルブックマークではない何かである。
自分が注目したURIを集積するだけなら今までもあった。自分が付けたコメントを集約できるだけなら今までもあった。ページ内にマーカーを引けるだけなら今までもあった。自他の発言を流してコミュニケーションするだけなら今までもあった。だが、違う。twitterやLUNARRを評価する系の人はコモンズマーカー使ってみたほうがいいよ。
コモンズマーカーとは何か。それは使い込んでみなければ本当には分からない。そして、一定の人数が参加してその真の価値が現れてくる。この手の「類似物の存在しないまったく新しい何か」にコストを費やすのはある種の賭であるが、twitterのときと同様に私は賭ける価値があると感じている。
私も、継続的な利用を通じて言葉にはできない使い分けの感覚を身につけたり、新しい使い方を発見したりすることだろう。おそらくはtwitter(またはその代替)、tumblr、blog、mixi、SBSと並んでコモンズマーカーを使うだろう。(とりあえずフィードが実装されれば!)