RAILS OF RUBY ON RAILS

Rails of Ruby on Rails ~Case of LOCUSANDWONDERS.COM~

Rails of Ruby on Rails ~Case of LOCUSANDWONDERS.COM~

Ruby本、Rails本の出版ラッシュである。このラッシュを2000年の第1次ラッシュ、2006年の第2次ラッシュに続く、第2.5次ラッシュと呼んでいる。

のりお本

さて、著者ののりおさんから『 Rails of Ruby on Rails ~Case of LOCUSANDWONDERS.COM~ 』を献本いただいた。企画段階では「のりお本」とか「デザイナ本」と呼ばれていたものである。これまでの完全にプログラマ指向のRuby on Rails解説書とは少し違う、Webデザイナのほうを向いた本である。

一見して、全ページカラーでしかも黒地、時折良い感じの写真が入って、という雰囲気に驚かされる。そして、読み進むとその濃さに驚かされる。

内容

プログラミングを基礎から教えるという感じではない。かといって、Webプログラミングの経験なんてものを前提としているわけではない。Webデザイナ向けという趣旨から考えて、JavaScriptをちょっといじっているとか、そんな層が対象なのだろう。そうしたレベルからスタートして、けれども読了時の到達点は結構高い。

アーティストのサイトの実際の構築事例を通じて解説しているというスタイルも注目だ。そうした事例によって地に足のついたままに、Railsアプリケーションの構築や様々な魅力的なプラグインを流れるように紹介していく。

Railsには便利なプラグインは数多くあるが、どれをとりあげるかは難しい問題だ。単に解説で見栄えがすると言うだけでなく、実際のサイト構築で役に立つものでなければならない。Railsに真っ先に飛びついたアーリーアダプターたちは試行錯誤して使えるプラグインを見分けてきたものだが、本書で紹介しているプラグイン選択の妙は「なるほどこれが正解だ」と叫びたくなる。実際の事例を通じて裏打ちされているからこそできる技である。

どうやって読むか

書籍の前半にかなりの内容が詰まっている。その勾配の高さ故に、一直線に理解が進むという訳にはいかない。例えば、本格的なプログラミングの経験を前提としないならばデータベースについての説明が不足してるのではないか、と最初読んでいて不安に思った。けれども、そうした疑問点はとにかく手を動かしていくと後半ですっきり解決されるように構成されている。

いいから、騙されたと思って本のコードを打ち込んで動かしてみよ。そして、動作させながら先に進め。それで本書の前半を読み終わったら、既にRails使いとしては中級者以上のレベルにいる。そして、後半では更に様々な事例を通じて、魅力的なプラグイン(と、アーティストへのインタビュー)に触れることができる。

アーティストへのインタビューは、技術書としてみれば要らないんだろうけどなー。でも、intervieweeが魅力なせいで結構楽しく読めたし、何よりもサイトコンセプトやなんかを中の人に語ってもらうことで、理解の厚みが増すように思う。私なんかが書く「解説のためのでっち上げのアプリケーション」では真似できない世界だ。

考えるんじゃない、感じるんだ。これはRubyの特徴であり、Railsの特徴である。だとすれば、本書は実にRuby on Rails的ではないか。

あわせて読みたい

実践して、体感して、身につけるための本である。リファレンスとしての検索性を要求するのは酷だろう。そんなものを無理に取り込めば本書の雰囲気を損なって、一番大事なところが失われてしまう。

ならば、検索性のためには『 Railsレシピブック 183の技 』を勧めたい。のりお本を実践して体感し終わった後に、「これをしたいんだけどどうすれば良いんだっけ」とか「これをやる方法はないの?」とか調べるのに向いている。こちらも非常に中身が濃い本だ。