前の記事 に続いて日本Rubyカンファレンス2006をレポートする。
NaClのオープンソース戦略
本カンファレンスの協賛企業であり、まつもとさんをはじめRuby界のトップスターたちを多く擁するNaCl(ネットワーク応用通信研究所)から、代表取締役社長の井上浩さんによる発表。単なる協賛企業の宣伝スペースと思うなかれ。企業がオープンソースを支えていくための、企業がオープンソースを活用していくためのノウハウが詰まっている。
NaClの概要
現在は社員42名(+役員5名, アルバイト3名)とのこと。島根県に所在し、東京外神田に支社を持つ。主要な取引先は日本医師会のORCAプロジェクト。これはLinuxを用いることで医療システムのベンダーへの依存性を低減することを目的とするもの。
勤務時間は裁量労働制、コミュニケーションはircとメールを中心、スーツを着る人は少ないというプログラマに居心地の良さそうな会社である。採用は毎年新卒3名、中途数名を採っており、今年の採用はまだ間に合うのでどうぞよろしくとのこと。新卒は可能性に注目して採り、中途は実務の実績ベースで評価するそうだ。
NaClの歴史
1997年
有限会社として8人で設立。www.linux.or.jpのサーバーホスティングを賄うために会社を設立したというのが特徴的。この直後にまつもとさんが入社する。
1998年
株式会社化し、増資を行った。
2000年
世間ではいわゆるITバブルであり、これに乗ってNaClも社名を「ゼータビッツ株式会社」と改めて、渋谷のオフィスで業務を始めた。
2001年
本来やりたいことと現実の業務とのずれを感じて、「株式会社ネットワーク応用通信研究所」を再設立したとのこと。この頃の成果物としてはORCAプロジェクトに基づく「日医標準レセプトソフト」がある。CVSごと公開されて、現在もオープンに広く使われている。
2004年
ふるさと島根定住財団による「Ruby講習会」を実施。
2006年
Railsブレークの波に乗り、「Ruby on Railsトレーニングプログラム」を実施。講師に後藤裕蔵さん、前田修吾さん。補助としてまつもとゆきひろさんという恐ろしいばかりのゴージャスさ。これを上回るにはDHHあたりを講師にするしかないだろう。
NaClとオープンソースソフトウェア
NaClはRuby界を中心に数多くのオープンソース開発者を擁する。
生越昌己
前田修吾
後藤裕蔵
齊藤登
ruby-postgres (PostgreSQL用Rubyライブラリ)
かずひこ
高尾宏治
MONPE (帳簿開発システム), Gpass (パスワード管理システム), security-keeper (セキュリティ調査・対策ツール)
西田雄也
山崎裕美
現在はまつもとさんは会社業務としてRuby開発に従事していたりするが、それによってNaClがRubyに対して強く権利を主張するということはしていない。他も然り。
この他のNaCl製品としては全文検索システム「rast」やCRM, FAQ管理システム「Laborシリーズ」がある。現在島根県から請けて「島根県CMS」を開発中であり、これは島根県の意向もあってオープンソースソフトウェアとして公開予定である。
NaClとRuby
1997年4月
まつもとゆきひろさん入社
1999年
前田修吾さん入社
2001年
後藤裕蔵さん入社
2004年
かずひこさん入社
2006年7月
NaClとRubyビジネス
1998年
2004年
ふるさと島根定住財団事業「Ruby講習会」を実施
2006年
Ruby on Railsトレーニングプログラム
今後のRuby市場
NaClはオープンソースソフトウェアにおけるリテラシーの差を売上げとしている。「オープンソースソフトウェアは良いものらしいけれども、よく分からない、ノウハウが無い」人たちを対象に知識を提供することで利益を上げる。
現在はPPP(Perl, Python, PHP)技術者が引っ張りだこであるが、それらの世界では「これからはRubyだろう」と言われている。Ruby市場は成長し、その中でNaClもまた成長するだろう。